マーケティング
AI時代にマーケターに残る仕事とは?作業と判断の線を引き直す
- 公開日
- 更新日
- 著者
- BUSCA編集部
- 監修
- 代表 戸井田 翔馬
この記事の結論
- AI時代にマーケターに残る仕事とは、何を問うかを決め、一次情報を取りに行き、決めた理由を説明して組織を動かす仕事です。
- AIに渡せるのは、材料がそろっていて、良し悪しを人が判断できる作業です。逆に、材料集めと最終判断は人に残ります。
- 作業の速さで差がつく時代は終わりつつあり、問いの立て方と検証の設計で差がつく時代に移っています。
AI時代にマーケターに残る仕事とは、問いと責任の部分
結論から言うと、AI時代にマーケターに残る仕事とは、何を問うかを決め、一次情報を取りに行き、決めた理由を説明して組織を動かす仕事です。
この数年で変わったのは、作業の速さが差になりにくくなったことです。文章を書く、要約する、案を10個出す、といった工程は、以前ほど時間も人手もかかりません。一方で、どの課題に取り組むかを決めることと、その決定に社内の納得をつくることは、人の手元に残っています。
作業と判断の線を引き直すこと。それがいま、マーケターに求められている整理です。
AIに渡せるようになった仕事
結論から言うと、材料がそろっていて、出力の良し悪しを人が判断できる作業は渡せます。
具体的には、次のような工程です。
- たたき台づくり:構成案、見出し案、広告文の候補出し
- 整形と要約:議事録の整理、長い資料の要点抽出、フォーマット変換
- 分類と下処理:問い合わせ内容のタグ付け、アンケート自由記述の仕分け
共通しているのは、正解が1つに決まらないが、良し悪しは人が見れば分かるという点です。逆に、出力を見ても正しいかどうか判断できない領域に使うと、確認のコストが増えて逆効果になります。ここが渡してよい作業かどうかの、実務的な線引きです。
残る仕事①:何を問うかを決める
結論から言うと、問いを決める工程は、材料がそろっていないので渡せません。
「CVRを上げるには」と問えば、改善案が並びます。しかし本当に必要なのが「そもそもこのフォームに来る人が、想定した層とずれていないか」だった場合、出てくる改善案は的外れになります。問いが間違っていても、答えはもっともらしく出てくるところが、いちばん注意すべき点です。
問いを決めるのは、自社の事業状況・過去の経緯・現場の肌感を持っている人にしかできません。この力の鍛え方については、アート思考の記事で詳しく扱っています。
残る仕事②:一次情報を取りに行く
結論から言うと、顧客に会って聞いた話と、自社の生データは、外からは手に入りません。
商談で顧客が口にした一言、失注の本当の理由、営業が現場で感じている違和感。こうした情報は社外に出ていないので、どれだけ高性能なモデルでも参照できません。同じことは自社の数字にも言えます。
取りに行く手段は、大がかりなものでなくて構いません。
- 月に数件、受注・失注した顧客に、決め手を直接聞く
- 営業の商談に同席し、実際に使われている言葉をそのまま記録する
- 問い合わせフォームの自由記述を、加工せずに読む
どれも時間はかかりますが、ここで得た言葉は、そのまま広告文やサイトの見出しに使えます。整った資料より、顧客が実際に口にした一文のほうが、読み手には届きます。
そして、一次情報を持っているかどうかは、そのまま発信の質になります。どこかにある一般論を整理し直しただけの記事は、いまや誰でも大量に作れます。読み手にとっても、検索エンジンや生成AIにとっても、価値が出るのは自社でしか書けない部分です。
残る仕事③:決めた理由を説明し、組織を動かす
結論から言うと、決定を実行に変える工程は、人の関係の上にしか成立しません。
施策を止める、予算を移す、優先順位を入れ替える。どれも、決めただけでは動きません。関係者が納得し、判断の責任を誰が持つかがはっきりして、初めて実行に移ります。
BUSCAが支援に入るときも、時間がかかるのは分析ではなく、この合意形成です。ある大手IT企業のAI関連新規事業では、戦略策定からサイト構築・リリースまでを1.5ヶ月で完了しましたが、速さの理由は作業量ではなく、KPIと実行ロードマップを先に一枚に固定し、判断のたびにそこへ戻れる状態をつくったことにあります(支援事例)。決め方が共有されていれば、途中の判断が止まりません。
明日から変えられる分け方
結論から言うと、業務を「材料集め・判断・作業」の3つに分けて、作業から渡します。
いまの仕事を1週間分書き出し、次の基準で仕分けてみてください。
- 材料集め:顧客との会話、営業へのヒアリング、生データの確認 → 人がやる
- 判断:どの課題に取り組むか、何をやめるか → 人がやる
- 作業:材料がそろっていて、出力を評価できるもの → 渡せる
仕分けたあと、渡した作業で浮いた時間を、そのまま材料集めに移します。AIを使う目的は、作業を減らすことではなく、一次情報に触れる時間を増やすことだと考えると、判断を間違えにくくなります。
伸ばすべきは、検証の設計力
結論から言うと、問いを立てる力と、それを検証に落とす力はセットで必要です。
問いだけを広げても、確かめられなければ意見の言い合いになります。逆に検証ばかり丁寧でも、問いがずれていれば、正しく測った無意味な数字が残ります。
BUSCAが法人向けに提供しているExperience Artでは、この「問いを立てる力」を研修として扱い、観察力・根拠説明力・コミュニケーション・心理的安全性をスコア化して、実施前後の変化を測っています。抽象的に見える力でも、測り方を決めれば育てる対象になります。作業の速さではなく、問いと検証の質。マーケターが投資すべき先は、そちらに移りました。
よくある質問
- 生成AIのツールは、何を基準に選べばよいですか。
- ツール名より先に、任せる作業を決めてください。材料がそろっていて、出力の良し悪しを自分で判断できる作業から渡すのが基本です。判断できない領域に使うと、確認に時間がかかり、かえって遅くなります。
- 若手のマーケターは、何から身につけるべきですか。
- 顧客と直接話す経験と、数字を自分で確認する習慣です。どちらもAIが代われない一次情報にあたります。文章作成や資料整形の速さは、いまから差がつきにくい領域になりました。
- AIに任せると、品質が落ちませんか。
- 検証の工程を残せば落ちません。問題になるのは、任せた範囲の出力を誰も確認しないまま公開する場合です。誰が何を確認して出すのかを決めておけば、作業を渡しても品質は保てます。