アート思考
アート思考とは?ビジネスで注目される理由とマーケティングへの活かし方
- 公開日
- 更新日
- 著者
- BUSCA編集部
- 監修
- 代表 戸井田 翔馬
この記事の結論
- アート思考とは、与えられた問題を解くのではなく「そもそも何を問うべきか」を自分で決めるための思考法です。
- 注目されている理由は、答えを出す作業の多くをAIが担えるようになり、問いを立てる仕事の比重が上がったためです。
- マーケティングでは施策そのものより、その前段にある「誰に、何を、なぜ伝えるのか」の解像度を上げる場面で効きます。
アート思考とは、自分で問いを立てる思考法
結論から言うと、アート思考とは、与えられた問題を解くのではなく、「そもそも何を問うべきか」を自分で決めるための思考法です。
アーティストは、誰かに出された課題に答えるために作品をつくるわけではありません。目の前の世界をよく観察し、自分なりの問いを立て、その問いへの答えを形にします。この一連の流れをビジネスに応用したものが、アート思考と呼ばれています。
BUSCAでは、この流れを3つの層で整理しています。
- 観察:事実をそのまま見る。解釈を急がない
- 問い:「そもそも何が起きているのか」を問い直す
- 意味づけ:見えたものに、自分たちなりの価値や意図を与える
大事なのは、正解が用意されていない状況でも考え続けられることです。市場調査やデータ分析は、すでに並んでいる選択肢を比べるのは得意ですが、まだ誰も選択肢として挙げていないものは出てきません。アート思考が扱うのは、その手前の領域です。
なぜいま、ビジネスで注目されるのか
結論から言うと、答えを出す作業の多くをAIが引き受けるようになり、「何を問うか」を決める仕事の比重が上がったからです。
分析・要約・最適化は、すでにAIが実務で使える精度で担えます。一方で、どの課題に取り組むかを決めること、その決定に社内の納得感を持たせることは、いまも人の仕事として残っています。問いの質がそのまま事業の方向を決める、という構図が以前よりはっきりしてきました。
もうひとつは、組織の側の事情です。前例のない意思決定が増えるほど、会議では事実の確認よりも解釈のすり合わせに時間がかかります。互いの見え方の違いを言葉にできるチームと、そうでないチームとでは、意思決定の速さと納得感に差が出ます。アート思考は、この「見え方を言葉にする」練習でもあります。
デザイン思考・ロジカルシンキングとの違い
結論から言うと、3つは対立するものではなく、扱う段階が違います。どれが優れているかではなく、いま自社に欠けているのはどれかで考えるほうが実務に合います。
- ロジカルシンキング:与えられた問題を、筋道を立てて解く
- デザイン思考:ユーザーの課題を起点に、解決策をつくる
- アート思考:自分たちが取り組む問いそのものを立てる
順番で言えば、アート思考が「何をやるか」を決め、デザイン思考が「どう形にするか」を設計し、ロジカルシンキングが「うまくいっているか」を検証します。新規事業の初期に議論が空回りしているときは、解決策の質ではなく、問いの立て方に原因があることが少なくありません。
マーケティングへの活かし方
結論から言うと、施策そのものよりも、その前段にある「誰に、何を、なぜ伝えるのか」の解像度を上げる場面で効きます。
BUSCAがマーケティング/デザイン支援の現場で使っているのは、次の3つの場面です。
- 顧客理解:データで分かるのは行動の結果だけです。観察の視点を持つと、なぜその行動をとったのかについて、検証に値する仮説の数が増えます
- ブランドの言語化:競合と同じ言葉を並べるのをやめ、自分たちの意味づけを言葉にします。訴求の軸が決まると、制作物の判断がぶれません
- 企画の発散:最初から実現可能性で絞り込まず、問いを広げてから絞ります。順番を逆にすると、企画は前年の焼き直しに寄っていきます
注意点もあります。アート思考は、数値目標や検証の代わりにはなりません。広げた問いは、最終的に指標と結びつけて検証する必要があります。発想を広げる工程と、数字で確かめる工程は、必ずセットで設計してください。
向いている場面と、向いていない場面
結論から言うと、目的が決まっていない段階には向き、決まった目的を速く回す段階には向きません。ここを取り違えると、現場は「趣旨が分からない研修」と受け取ります。
向いているのは、次のような状態です。
- 新規事業やブランドの方向を、これから決めようとしている
- 施策は回っているが、去年の焼き直しから抜け出せない
- 会議で意見が出ず、決まったことに納得感が残らない
逆に、締切の決まった案件を確実に納めたい、すでに決めた指標を改善したい、という段階では、通常の進行管理とデータ分析のほうが早く効きます。アート思考は、その前段で方向を決め直すための道具だと考えてください。
研修として導入するときの進め方
結論から言うと、意思決定に関わる少人数から始め、変化を測ってから広げるのが現実的です。全社研修から入ると、日々の議題と切り離された「いい話」で終わりやすくなります。
BUSCAは、法人向けのアート思考研修Experience Artを提供しています。ある企業の経営チームに創造力開発コース「Creative Vision」を実施したときは、起きている事象や数字に対してその場しのぎの対応を考えることが多く、議論が深まりにくいという状態から始まりました。アート作品を使った対話型鑑賞で観察力と問いの質を鍛えたところ、「そもそも何が起きているのか」「何を問い直すべきか」をチームが自然と話すようになり、議論の深さと意思決定の納得感が変わっています(導入事例)。
この経験から、設計で外さないようにしているのは次の3点です。
- 測る:観察力・根拠説明力・コミュニケーション・心理的安全性をスコア化し、実施前後で比較する
- つなぐ:研修を単発で終わらせず、実際に議論中のテーマに接続する
- 同席する:経営・事業の責任者が同じ場に入る。判断する人が体験していないと、現場だけが変わって終わります
アート思考は、特別な才能のある人だけのものではありません。観察と問いは練習で伸ばせる領域であり、組織の共通言語にできれば、会議の質から変わっていきます。
よくある質問
- アート思考にアートの知識や絵の技術は必要ですか。
- 必要ありません。作品を描くのではなく、作品を見て考えることが中心だからです。BUSCAの研修でも、参加者に制作の経験や美術の知識は求めていません。
- デザイン思考とアート思考は、どちらを先に学ぶべきですか。
- 取り組む段階によります。解くべき課題がすでに決まっているならデザイン思考、「そもそも何に取り組むべきか」から考える段階ならアート思考が向いています。両者は対立するものではなく、順番の違いだと捉えるのが実務的です。
- 研修の効果はどう確認しますか。
- BUSCAの研修では、観察力・根拠説明力・コミュニケーション・心理的安全性をスコア化し、実施前後で変化を測っています。数値の変化と、会議での発言の変化を合わせて確認する方法をとっています。